「『FORUM21』名誉毀損事件」 東京地裁判決 平成18年5月15日(2006/05/15)


このテキストは、東村山市民新聞(無題ページ)で公開されている、所謂、「『FORUM21』名誉毀損事件」の「平成16年(ワ)第3540号 謝罪広告等請求事件 東京地方裁判所判決(33ページ分)」 を OCRしたものですので、誤認識の修正はしてありますが、判決文内容を正確に反映していない可能性があります。

  ○ 「空白」、「フォントサイズ」、「体裁」は 原本を反映していません。
  ○ OCRソフトの都合上、英数字の半角全角、句読点が原本通りでない可能性があります。
  ○ 一部の個人情報を「○」で置き換えています。

  ○ 25〜32頁は、別紙1〜5。 25〜28頁: 「FORUM21」 問題記事 8〜15頁


※ 間違いなどありましたら、「Tomatotic-jellyの日記」の適当な記事にコメントしてください。

以下、OCR結果。



平成18年5月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 小窪孝紀
平成16年(ワ)第3540号 謝罪広告等請求事件
口頭弁論終結日 平成17年12月12日
              判      決
   東京都新宿区○○○○○○○
          原        告      創  価  学  会
          代 表 者 代 表 役 員      青  木     亨
          同訴訟代理人弁護士       福  島  啓  充
          同               井  田  吉  則
          同               丸  山  和  広
          同               新  堀  富 士 夫
          同               海  野  秀  樹
          同               小  川  治  彦
   東京都東村山市萩山町○○○○○○○○○○○
          被       告       矢  野  穂  積
          同訴訟代理人弁護士       中  田  康  一
   東京都新宿区○○○○○○○○○○○
          被       告       有限会社フォーラム
          代 表 者 取 締 役        乙  骨  正  生
   埼玉県狭山市○○○○○○○○
          被       告       乙  骨  正  生
          同訴訟代理人弁護士       菊  池     紘
          同               田  見  高  秀
              主      文
   1 被告らは,原告に対し,連帯して金170万円及びこれに対する平成1
    6年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

                 −1−


   2 被告らは,別紙4記載の謝罪広告を,被告有限会社フォーラム発行の雑

    誌「FORUM21」に,別紙5記載の条件で,1回掲載せよ。

   3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。

   4 訴訟費用は,これを7分し,その1を被告らの負担とし,その余は原告

    の負担とする。
   5
   ○(1字抹消:t-j補注) この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

               事 実 及 び 理 由

第1 請求

 1 被告らは,原告に対し,連帯して1 1 0 0万円及びこれに対する平成16年

1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

 2 被告らは,聖教新聞の全国版及び被告有限会社フォーラム発行の雑誌「FO

RUM21」に別紙2記載の謝罪広告を別紙3記載の条件で各1回掲載せよ。

第2 事案の概要

 1 本件は,宗教法人である原告が,被告らに対し,「被告有限会社フォーラム

の発行する雑誌『FORUM21』平成16年1月15日号に掲載された被告乙骨

正生,被告矢野穂積及び朝木直子による「やはり『他殺』だった朝木明代東村山市

議怪死事件」と題する座談会記事は,朝木明代東村山市議会議員の転落死事件につ

いて,原告が同議員を殺害した犯人であるとの虚偽の事実を摘示するものである。

これにより原告の社会的評価は著しく低下し,原告の名誉は毀損された。」などと

して,共同不法行為に基づく損害賠償として1 1 0 0万円及びこれに対する不法行

為の日である同16年1月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による

遅延損害金の連帯支払並びに聖教新聞全国版及び雑誌「FORUM21」への別紙

2記載の謝罪広告の掲載を求めた事案である。

 2 争いのない事実

 (1) 当事者等

     原告は,昭和27年9月8日,宗教法人法に基づいて設立された宗教法

                  −2−


人である。
 被告矢野穂積(以下「被告矢野」という。)は,東村山市議会議員であり,朝木
直子は,東村山市議会議員であった故朝木明代(以下「朝木明代市議」という。)
の子であり,同人死亡後に東村山市議会議員になった者である。被告矢野と朔木直
子は,被告矢野が発行人,朝木直子が編集者となって,東村山市民新聞を発行して
いる。
 被告有限会社フォーラム(以下「被告会社」という。)は,宗教等に関する出版
等を目的として平成14年2月1日に設立された有限会社であり,被告乙骨正生
 (以下「被告乙骨」という。)は同社の取締役である。被告会社は,雑誌「FOR
UM21」を隔週刊にて出版し,これを全国的に販売している。被告乙骨は上記雑
誌「FORUM21」の編集人兼発行人である。
  (2) 「FORUM21」平成16年1月15日号の出版
     被告乙骨及び被告会社は,「FORUM21」平成16年1月15日号
 (以下「本件雑誌」という。)において,「特集/検証一新事実が明らかになった
 『東村山事件』」との特集記事を組み,その中で,「座談会 やはり『他殺』だっ
た 朝木明代東村山市議怪死事件」との見出しの下,別紙1記載の被告矢野,被告
乙骨及び朝木直子による座談会記事を掲載した(以下「本件記事」という。)。
 3 争点
   本件記事につき,被告らは,原告に対し,名誉毀損による不法行為責任を負
  うか否か。
 (原告の主張及び反論)
  (1) 本件記事の名誉毀損性の有無等
     本件記事は,その冒頭で(本件雑誌8頁),「創価学会による人権侵害
問題などに精力的に取り組んでいた朝木明代市議が,西武新宿線東村山駅東口にあ
る雑居ビルから転落して死亡したのは平成7年9月2日のこと。」として,朝木明
代市議の転落死事件(以下「朝木市議転落死事件」という。)を紹介した上,「こ

                  −3−


の転落死について朝木さんの遺族や関係者は,事件は朝木さんの活動を快く思わな
い何者かによる『他殺』であると主張。」,「朝木明代市議の転落死事件について,
遺族・関係者による真相究明の努力の結果,事件は警察・検察が発表したような
『犯罪性はない=自殺』ではなく,『他殺』だったことが,新事実の判明により明
らかになった。」と記載している。そして,「遺体に残されていた「争った跡」」
との標題の下,座談会形式の記事に入り(本件雑誌9頁以下),まず,「昨年11
月,朝木直子さんと矢野さんは,『東村山の闇』を上梓されました。その中で警察
や創価学会が主張する『自殺』説」を根底から覆す新事実を発表されています」と
して「新事実」なるものを紹介した上,「当然,導き出される結論は,朝木明代市
議の転落死は『他殺』だったということです」,「『他殺』であることが客観的に
証明されたと考えています」などと記載している。
 本件記事は,これらの記載によって,読者に対し,朝木明代市議の死が「他殺」
であり,犯人は同市議の活動を快く思わない者であるとの印象を与えているところ,
下記@ないしEのとおり,本件記事中の随所で原告の名称を取り上げているから,
読者に対し,朝木市議転落死事件と原告の間に関連があるとの印象を与えるもので
ある。
                    記
   @「創価学会による人権侵害問題などに精力的に取り組んでいた朝木明代市
    議が(中略)雑居ビルから転落して死亡した」
   A「同事件を所轄する東京地検八王子支部で実際に捜査に当たった信田昌男
    検事は,創価学園・創価大学出身の創価学会エリート。そして信田検事の
    上司に当たる地検ハ王子支部の吉村弘支部長検事もまた,創価学会の副会
    長の妹を妻にしている創価学会エリートだったことが,事件後,半年を過
    ぎた平成8年春に判明」
   B「朝木さんを敵視していた創価学会は,事件発生直後から事件を『自殺』,
    それも朝木明代市議に対してかけられていた『万引被疑事件を苦にしての

                  −4−


    自殺』と大宣伝を繰り返し」
   C「昨年11月,朝木直子さんと矢野さんは,『東村山の闇』を上梓されま
    した。その中で警察や創価学会が主張する『自殺』説を根底から覆す新事
    実を発表されています」
   D「警察や創価学会が『自殺』の動機だと主張してきた朝木明代市議に対す
    る『万引き』容疑が,実は,確証のない冤罪であった」
   E「担当の信田検事と吉村支部長検事が創価学会幹部であり,創価学会コン
    ビによって捜査の指揮が執られていたことが判ってから後は,司法解剖す
    らも遺族に遺体を検証させないための仕掛けだったのではないかと思うよ
    うになりました」
 その上で,本件記事は,講談社発行の「週刊現代」(平成7年9月23日号)に
掲載された「東村山女性市議『変死』の謎に迫る・夫と娘が激白!『明代は創価学
会に殺された』」と題する朝木市議転落死事件に関する記事(以下「現代記事」と
いう。)について,原告が,記事を掲載した講談社と,この記事にコメントを寄せ
た朝木明代市議の夫である朝木○○及び朝木直子に対し,名誉毀損罪で刑事告訴し
たが,東京地検は同10年7月15日に上記告訴事件を不起訴処分にしたことを紹
介している(本件雑誌12頁)。そして,上記不起訴処分に不満をもった告訴代理
人の井田吉則弁護士が,同日,東京地検ハ王子支部の担当検察官に電話をして,そ
の理由を問い合わせていたところ,その際,被告矢野は,同支部に出向いて,担当
検察官と話をしていた最中であったため,この井田吉則弁護士と検察官のやり取り
を聞くことができたとして,「この日,私は別件の暴力事件についての被害状況を
説明するために東京地検ハ王子支部に出向き,担当検察官と話をしていたところ,
創価学会の代理人である井田吉則弁護士から検察官に電話がかかってきました。話
の内容は,不起訴の決定に対する不満であり,不起訴にした理由を執拗に問い質す
ものでしたので注意して聞いていたところ,検察官は,『告訴から3年間,十二分
に捜査した結果,創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定できないという

                  −5−


ことで,不起訴の処分を決めたんですよ』と発言したのです。井田弁護士はその後,
創価学会に対する別件の裁判に提出した陳述書で,この検察の処分の時期を偽るな
どしてそうした会話はなかったと否定しています。しかし検察官は不起訴理由の一
つに関与についての疑惑がある旨,指摘しました。」との被告矢野の発言を掲載し
ている(本件雑誌12頁,以下「本件問題部分」といい,このうち検察官の発言部
分を「本件検察官発言」という。)。
 本件記事の読者は,本件問題部分に至るまでに,その文脈から,朝木市議転落死
事件と原告に何らかの関連があるとの印象を持つが,このような印象の下で本件問
題部分を読めば,上記事件は,原告が朝木明代市議を殺害した「他殺」事件である
との印象を持つに至るのである。
 以上のとおりであって,本件記事は,「やはり『他殺』だった 朝木明代東村山
市議怪死事件」との大見出しの下,朝木市議転落死事件について新事実が判明し,
かねて被告らが主張してきたとおり,朝木明代市議の死は自殺ではなく,同市議の
活動を快く思わない者に殺害された「他殺」事件であったと断定した上,読者に同
市議は一体誰に殺されたのかとの興味を持たせつつ,随所に原告の名称を挙げて朝
木市議転落死事件と原告との関係をにおわせ,本件問題部分により,朝木市議転落
死事件は,原告が故朝木市議を殺害した「他殺」事件であるとの事実を摘示したも
のである。そして,このような本件記事を読んだ読者が,朝木市議転落死事件は原
告が朝木明代市議を殺害した「他殺」事件であるとの印象を持つことは明らかであ
るから,本件記事及び本件問題部分は原告の社会的評価を著しく低下させ,その名
誉を毀損するものである。
 よって,被告矢野は本件問題部分の発言者として,あるいは本件記事内容を事前
に認識していた者として,被告乙骨は本件記事の編集人兼発行人として,被告会社
は同記事を掲載した本件雑誌の出版者として,それぞれ原告に対し,名誉毀損によ
る共同不法行為責任を負うというべきである。
 これに対し,被告会社及び被告乙骨(以下,両者を「被告乙骨ら」という。)は,

                  −6−


本件記事は特定の者を朝木市議転落死事件の犯人と名指しするものではないなどと
して,被告矢野も本件記事の名誉毀損性を否定する旨主張する。しかし,上記のと
おり,本件記事はその随所で原告の名称を挙げているし,何より本件問題部分中の
検察官の発言を掲載している。また,本件雑誌には本件記事以外にも多数原告を誹
膀中傷する記事が掲載されていることからも判るように,[FORUM21」は,
被告乙骨が,原告を誹膀中傷することを主たる目的として発刊した雑誌であり,同
誌には,他にも原告を誹膀中傷する多くの記事が掲載されており,しかも,申込み
により直接郵送・配布される定期購読誌であるから,同前のほとんどの読者は,上
記記事が批判の対象としているのは原告であることを当然に了解しているのである。
被告乙骨らや,「FORUM21」の上記のような性格,読者層を熟知している被
告矢野は,本件記事中の随所に原告の名称を挙げた上,本件問題部分を発言・掲載
することによって,朝木市議転落死事件は,原告が朝木明代市議を殺害した「他
殺」事件であるとの事実を摘示したものであり,同雑誌の読者が,原告が同事件に
関与したとの認識を持つのは当然である。被告らの上記主張は失当である。
 被告らは,朝木市議転落死事件が「他殺」である根拠として,平成10年7月2
1日に作成された司法解剖鑑定書や朝木市議転落死事件に関するいくつかの判決を
挙げるが,いずれも「他殺」の根拠となり得るものではない。
 被告乙骨らは,本件検察官発言があったと信ずるにつき相当な理由があり,ひい
ては上記摘示事実が真実であったと信ずるにつき相当な理由があった旨主張するも
ののようでもある。しかしながら,被告乙骨は,本件検察官発言につき,被告矢野
からしか取材していないところ,この被告矢野の発言は,その記憶や供述に不正確
さがあり,また,その供述は変遷を重ねているのである(同人もそれを了知してい
るのである。)。そうすると,被告乙骨らは,十分な裏付け取材を行っていないと
いうほかない。また,被告乙骨は,朝木市議転落死事件が他殺であると断定する根
拠は何もないにもかかわらず,他殺であることが明らかになったなどと殊更に断定
的な表現を用いており,本件記事が原告に対する誹膀中傷を企図していることが明

                  −7−


らかである。
 (2) 損害について
     被告らは,朝木市議転落死事件について,殊更に原告が朝木明代市議の
殺害犯人であるかのごとき虚偽の事実を摘示し,原告に悪質な誹膀中傷を加えたも
のである。しかも,被告らは以前にも東村山新聞等に同様の記事を掲載し,原告か
ら提起された民事訴訟において損害賠償や謝罪広告掲載を命じられていながら,な
お,本件記事で同内容の名誉毀損行為を繰り返しており,悪質である。そして,雑
誌「FORUM21」は日本全国で4000部発行され,政界・マスコミ関係者等
にも多数配布されている。このような事情からすれば,被告らの不法行為により原
告が被った無形損害は甚大であり,これを金銭的に評価すれば1000万円を下る
ことはない。また,原告が本件訴訟代理人弁護士らに支払う弁護士費用のうち,1
00万円は被告らの不法行為と相当因果関係がある。
 上記のとおり,被告らの不法行為により原告の被った損害は極めて甚大なもので
あるが,さらに本件記事の内容が原告を殺人者呼ばわりするという極めて悪質なも
のであること,また,事実確認を全く行わずに本件記事が作成,掲載されたこと等
からすれば,原告の被った損害は金銭賠償だけでは償い切れず,被告ら全員に対し
て,別紙記載の謝罪広告を掲載させることが必要である。
(被告らの反論及び主張)
 (1) 被告矢野
   ア 原告が名誉毀損であると主張する記述のうち,被告矢野が発言した部分
以外の記述については,その名誉毀損性の有無等にかかわらず,被告矢野が責任を
負うことはないというべきである。
 すなわち,被告矢野は,上記座談会で本件問題部分の発言をする7年くらい前か
ら本件検察官発言につき東村山市民新聞等で公表しているが,原告はこれを知りな
がら訴訟の提起や告訴等を行うことをしていない。そうすると,原告は,本件検察
官発言部分が真実であることを自認しているというべきであるから,当該部分に名

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誉毀損性がないことが明らかである。また,本件問題部分中の根幹部分は,「検察
官は,『告訴から3年間,十二分に捜査した結果,創価学会側(信者)が事件に関
与した疑いは否定できないということで,不起訴の処分を決めたんですよ』と発言
したのです。井田弁護士はその後,創価学会に対する別件の裁判に提出した陳述書
で,この検察の処分の時期を偽るなどしてそうした会話はなかったと否定していま
す。しかし検察官は不起訴理由の一つに関与についての疑惑がある旨,指摘しまし
た」という記述部分であるが,本件検察官発言はまさに被告矢野が現認した事実で
あるし,井田弁護士が検察の処分時期を偽るなど悪質な事実の捏造を行ったことも
真実であるから,本件問題部分が原告の社会的評価を低下させることはなく,名誉
毀損性はない(上記のように井田弁護士が悪質な事実の捏造を行ってまで被告矢野
が現認した本件検察官発言の存在を否定しようとしたことは,かえって被告矢野の
名誉を毀損するものである。)。
 原告は,本件問題部分等を読んだ一般読者が,朝木市議転落死事件は原告が朝木
明代市議を殺害した他殺事件であるとの印象を持つことになる旨主張する。しかし,
仮に一般読者がそのような印象を持つことがあるとしても,それは本件問題部分等
を読んだからではない。本件雑誌には本件記事の直後に本件記事と同じ特集記事で
ある「『怪死』事件との関連性を窺わせる『ニつの報道』と『一つの投書』」と題
する記事が掲載されているところ,この記事は原告の幹部が暴力団組長に朝木明代
市議を含む複数人の殺害を依頼した場面を撮影したビデオが存在する旨が記述され
ているから,一般の読者はこの記事によって,朝木市議転落死事件は,原告が朝木
明代市議を殺害した他殺事件であるとの印象を持つのである。すなわち,一般の読
者が原告が主張するような印象を持つに至るのは上記の記事が掲載されているから
であって,本件記事の本件問題部分を読んだだけで,一般読者が上記のような印象
を持つわけではない。
   イ 本件検察官発言は,朝木市議転落死事件について,担当検察官が発言し
た内容をそのまま伝えたものであるから,事実の公共性,目的の公益性があること

                  −9−


は明らかである。
 被告矢野は,本件検察官発言がされたとき,当該検察官のデスクを挟んだ正面の
至近距離に着席していてまさにそれを現認した。また,上記アのとおり,被告矢野
は,以前から本件検察官発言につき東村山市民新聞等でこれを公表しているが,原
告は,これに対して訴訟の提起や告訴等の措置をとっていないし,原告の本件訴訟
代理人弁護士である井田弁護士は,その陳述書(乙イ1,2号証)に虚偽を記載す
る等までして本件検察官発言を否定しようとしたのである。これらは原告が上記発
言を真実であると自認した証左である。よって,本件検察官発言は真実である。
 被告矢野は,本件検察官発言を指摘した後,本件問題部分において,「井田弁護
士は,その後,創価学会に対する別件の裁判に提出した陳述書で,この検察の処分
の時期を偽るなどしてそうした会話はなかったと否定しています。」と述べるなど,
井田弁護士の陳述書の内容についても正確に言及しているから,本件検察官発言部
分はこれを真実と信じるにつき相当の理由があったというべきである。
 以上によれば,本件検察官発言に言及した本件問題部分が原告の名誉を毀損する
ものであるとしても,違法性が阻却され,被告矢野に不法行為は成立しない。
 (2) 被告乙骨ら
   ア 本件記事の趣旨は,編集人たる被告乙骨のまとめの発言(本件雑誌15
頁)に明らかなように,司法判断で朝木明代市議の転落死が自殺ではないことが確
定したこと及び朝木明代市議が万引きの犯人ではないことが確定したことの2点を
報道し,今後はその真相究明が焦点となることを報道することにあるのであって,
特定の者を朝木市議転落死事件の犯人であると名指しするものではない。このこと
は,本件記事全体の構成及びその表現に照らして明らかである。また,一般の読者
の普通の注意と読み方を基準として本件検察官発言部分を読むと,この部分から読
みとれることは,1 5 0万人いるという原告の一信者が朝木市議転落死事件に何ら
かの関与をした疑いは否定できないと検察官が考えている事実のみである。
 以上のとおりであって,本件記事は原告の名誉を毀損するものではない。

                  −10 −


 なお,本件のように座談会形式の記事全体から生ずる名誉毀損性を問題とするよ
うな場合,その記事全体の中から,様々な箇所の記述を,記述がされた文脈を無視
して恣意的に選んでこれを取り上げ,そこから,原告の主観によれば一般人が推論
により一定の結論を引き出し得るとの判断を根拠として,記事全体が名誉毀損性を
帯びるというような論法は是認されるものではない。
   イ 仮に被告矢野が本件検察官発言を現認したとの指摘を含む本件記事全体
が原告の社会的評価を低下させることがあったとしても,それは「原告(信者)が
朝木市議転落死事件に関与した疑いがある」との論評表現にとどまるのであって,
上記事件は原告が朝木明代市議を殺害した他殺事件であるとの事実を摘示するもの
ではない。そして,上記論評は,宗教団体として公明党を支持する原告に関するも
のであるから公共の利害に関するもので,かつその目的は専ら公益を図ることにあ
る。また,上記論評の前提としている本件検察官発言については,被告矢野がまさ
に現認した事実であるし,同趣旨の事実が本件雑誌発行以前にも被告矢野が発行す
る東村山市民新聞に掲載されたにもかかわらず,原告が本件のように訴訟を提起す
るなどの手段をとっていないのはこのような事実が真実であることの証左である。
よって,上記発言は真実である。さらに被告乙骨らは,本件雑誌に上記発言を掲載
すると同時に,「井田弁護士はその後,創価学会に対する別件の裁判に提出した陳
述書で,この検察の処分の時期を偽るなどしてそうした会話はなかったと否定」し
たことがあるとの被告矢野の発言も掲載し,記事の客観性,公平性を保っているか
ら,上記発言を真実であると信じるにつき相当性がある。
 以上によれば,上記論評をした被告乙骨らの行為は違法性を欠くか故意・過失が
否定されるから不法行為は成立しないというべきである。
第3 争点に対する判断
 1 本件における事実の経過
   当事者間に争いがない事実と証拠(甲1号証,2号証の1ないし3,4号証,
6号証,9号証,11号証,19号証,21号証,24号証,乙イ1及び2号証,

                  −11 −


4及び5号証,44号証,乙ロ17号証,19号証,22ないし30号証,33号
証,証人井田吉則,被告矢野穂積,同乙骨正生)及び弁論の全趣旨によれば,本件
における事実経過として,次の各事実が認められる。
 (1) 雑誌「FORUM21」は,被告会社が「創価学会・公明党の圧力に屈
することなく,真正の宗教ジャーナリズムを確立することを目指している。」と標
榜して出版・販売する隔週刊の雑誌である(被告会社が雑誌「FORUM21」発
刊に当たって日蓮正宗各寺院宛に配布した案内状(甲4号証)には「すでに1年以
上にわたって活動を続けてまいりました研究会「フォーラム自由21」を基盤とし
て,多くの方々のご協力のもと,創価学会・公明党問題を含む宗教翰林の的確な記
事を発信する隔週刊誌を発刊することにいたしました。」と記載されている。)。
 雑誌「FORUM21」の発行部数は,約4000部であって,政界関係者やマ
スコミ関係者等にも多数配布されており,平成15年2月13日に行われた「FO
RUM21」の創刊1周年を祝し,被告乙骨を激励する会には,複数の国会議員や
月刊誌・週刊誌の編集長など,政界・マスコミ界・宗教界等から約200名が参加
した。
 (2) 原告は,平成7年9月12日,講談社発行の「週刊現代」(平成7年9
月23日号)に掲載された「東村山女性市議『変死』の謎に迫る・夫と娘が激白!
『明代は創価学会に殺された』」と題する朝木市議転落死事件に関する記事が原告
の名誉を毀損するとして,上記記事を掲載した株式会社講談社と同記事にコメント
を寄せた朝木明代市議の夫である朝木○○,朝木直子を刑事告訴した。これに対し,
東京地検ハ王子支部は,同10年7月15日に上記告訴事件を不起訴処分とした
 (以下「本件不起訴処分」という。)。さらに,原告は,上記記事について,朝木
○○,朝木直子,株式会社講談社及び同記事の編集長元木昌彦を被告として謝罪広
告等を求める民事訴訟を提起したが,この訴訟については,上記記事が原告の名誉
を毀損するとして,被告らに対して,損害賠償金の支払と週刊現代誌上への謝罪広
告掲載を命ずる判決が言い渡され,この判決は確定した。

                  −12−


 なお,朝木明代市議の死亡後には,上記「週刊現代」以外の複数の雑誌が,朝木
市議転落死事件に関連する報道を行っており,その中には原告と上記事件との関連
性について記述しているものもあった。
 (3) 被告矢野が発行人をつとめる東村山市民新聞の第97号(平成10年9
月1日付け)には,「地検,朝木議員殺害事件で決定 創価の刑事告訴,門前払い
に 逆に,事件関与の疑惑が証明されることに]との表題の下,本件不起訴処分に
関して,「捜査の結果,創価関係者が,朝木議員殺害までに至る事件・嫌がらせに
関与した疑惑は否定できないことが判明する事態となったのが不起訴の大きな理
由」である旨の記載がある(なお,上記の東村山市民新聞が発行された後,上記新
聞記事の内容に関し,原告が被告矢野に対して,訴訟を提起したり抗議をしたこと
はない。)。
 その後,被告矢野は,別件裁判における,平成11年11月15日に実施された
本人尋問において,本件検察官発言につき,「担当検察官は朝木市議転落死事件ま
での経過の中,事件,嫌がらせ等に創価学会信者が関係したことを否定できない」
との趣旨の説明をしていたと供述した。
 続いて,東村山市民新聞の第1 2 5号(平成14年4月30日付け,甲19号
証)には,本件検察官発言に関して,「98年7月,『創価学会が事件に関与した
疑いは否定できない』との理由で創価本部の告訴をしりぞけ,不起訴処分を決定し
ました」と記載されていた。
 さらに,被告矢野及び朝木直子が著した「東村山の闇 『女性市議転落死事件』
 8年目の真実」(乙ロ33号証,平成15年11月10日発行)との表題の書籍
中には,平成10年7月15日,本件不起訴処分に関して井田弁護士が担当検察官
との間でした電話のやり取りで,同検察官が,「告訴から三年間,十二分に捜査し
た結果,創価学会側が事件に関与した疑いは否定できないということで,不起訴の
処分を決めたんですよ」と発言し,それを被告矢野が現認していた旨の記述部分が
ある。

                  −13 −


 (4) 本件雑誌(平成16年1月15日号)は,上記(3)の雑誌,新聞,あ
るいは書籍が発行・発刊された後に発行されたが,本件記事の内容(全文)は別紙
1記載のとおりであり,本件問題部分(本件雑誌12頁)より前に記述された部分
 (本件雑誌8ないし11頁)には,「創価学会による人権侵害問題などに精力的に
取り組んでいた朝木明代市議が西武新宿線東村山駅東口にある雑居ビルから転落し
て死亡したのは平成7年9月2日未明のこと。」,「同事件を所轄する東京地検八
王子支部で実際に捜査に当たった信田昌男検事は,創価学園・創価大学出身の創価
学会エリート。そして信田検事の上司に当たる地検八王子支部の吉村弘支部検事
もまた,創価学会の副会長の妹を妻にしている創価学会エリートだったことが,事
件後,半年を過ぎた平成8年春に判明」,「朝木さんを敵視していた創価学会は,
事件発生直後から事件を『自殺』,それも朝木明代市議に対してかけられていた
 『万引被疑事件を苦にしての自殺』と大宣伝を繰り返し,」(本件雑誌8頁),
「昨年11月,朝木直子さんと矢野さんは,『東村山の闇』を上梓されました。そ
の中で警察や創価学会が主張する『自殺』説を根底から覆す新事実を発表されてい
ます」,「警察や創価学会が『自殺』の動機だと主張してきた朝木明代市議に対す
る『万引き』容疑が,実は,確証のない冤罪であったこと。」(本件雑誌9頁),
「担当の信田検事と吉村支部長検事が創価学会幹部であり,創価学会コンビによっ
て捜査の指揮が執られていたことが判ってから後は,司法解剖すらも遺族に遺体を
検証させないための仕掛けだったのではないかと思うようになりました。」(本件
雑誌11頁)などとして,原告の名称を上げて朝木明代市議の転落死について触れ
た記述部分がある。
 本件雑誌には,「特集/検証一新事実が明らかになった『東村山事件』」との特
集記事が組まれており,この特集記事中には,本件記事のほか,「東村山市議『怪
死』事件とその背景」(本件記事の直前に掲載されている。)及び「『怪死』事件
との関連性を窺わせる『ニつの報道』と『―つの投書』」(本件記事の直後に掲載
されている。)と題する2つの記事が掲載されている。このうち,後者の記事(乙

                  −14−


イ5号証)中には,原告(記事の該当部分では「某団体」と記述され,名称が伏せ
られているが,前後の文脈などからみてこれが原告を指称していることが明らかで
ある。)が暴力団組長に対して「すでに死亡(自殺?)しているA氏」(同記事中
にこの「A氏」に「朝木明代市議が当てはまることは明らか」との記述がある。)
を含む5名の殺害を1人20億円で依頼した場面を撮影したビデオが存在する旨の
記述部分がある。
 上記のとおり,本件記事中には本件検察官発言が掲載されているが,被告乙骨ら
には,上記発言について,担当検察官に対する取材等は行っておらず,被告矢野の
話にのみ依拠してこれを掲載した。また,被告矢野は,本件雑誌の発刊前に,本件
記事のうち,自己の発言部分を含む座談会形式で記述されている部分についてはそ
の原稿に目をとおし,その際,若干の加筆訂正を加えるなどした。
  (5) 井田弁護士は,上記の本件検察官発言に関連して,東京高等裁判所平成
14年(ネ)第2843号損害賠償請求事件において同年8月23日付け陳述書を,
また,東京地方裁判所同11年(ワ)第599号損害賠償請求事件において同14
年10月3日付け陳述書をそれぞれ作成し,これらを書証として上記各裁判所に提
出した。上記各陳述書には本件不起訴処分に関連して,「以上が私と担当検察官と
の主な会話の内容であり,上記の会話の内容から明らかなように,担当検察官が私
に対し,『創価学会側が事件に関与した疑いは否定できないことから,不起訴の処
分を決めた』と発言した事実はー切ありません。したがいまして,検察官の不起訴
処分の理由も『創価学会側が事件に関与した疑いは否定できない』からでないこと
は明らかであり,控訴人の主張は事実と全く異なります。このことは,その後東京
地検が朝木明代氏の転落死事件そのもについて捜査し,平成9年4月14日に『自
殺の疑いが強く,他殺の確証は得られなかった』と事実上自殺と断定し,捜査を終
結する旨の発表をしていることからも明らかだと思います。」との記載がある。
 2 不法行為の成否
   上記1認定の事実関係に基づいて,本件記事が原告に対する名誉毀損として

                  −15 −


不法行為を構成するか否かについて検討する。
  (1) 雑誌等の記事内容が人の社会的評価を低下させるものであるか否かは,
一般の読者の普通の読み方を基準として,本文記事の内容のみならず,見出しの文
言,その大きさ・配置等を総合し,一般の読者がその記事を読んだ際に当該記事全
体から通常受けるであろう印象によって判断するのを相当とするところ,本件記事
の本文は,「特集/検証一新事実が明らかになった『東村山事件』」との特集記事
に関する横書きの見出し,さらに「座談会 やはり『他殺』だった朝木明代東村山
市議怪死事件」との本件記事に関する縦書きの見出しに続いて記述されている。そ
して,本件記事の冒頭部分で,平成7年9月2日に発生した朝木市議転落死事件に
ついての記述がされた後,「この転落死について朝木さんの遺族や関係者は,事件
は朝木さんの活動を快く思わない何者かによる『他殺』であると主張」,「朝木明
代市議の転落死事件について,遺族・関係者による真相究明の努力の結果,事件は
警察・検察が発表したような『犯罪性はない=自殺』ではなく,『他殺』だったこ
とが,新事実の判明により明らかになった。」などの記述がある。
 そして,上記記述の後,本件記事は,被告乙骨,被告矢野及び朝木直子の発言を
座談会形式により掲載し,まず,被告乙骨の発言として「昨年11月,朝木直子さ
んと矢野さんは,『東村山の闇』を上梓されました。その中で警察や創価学会が主
張する「自殺」説を根底から覆す新事実を発表されています。」と記述され,新事
実として「第一には朝木明代市議の遺体を司法解剖した「鑑定書」に,第三者と争
った跡である皮下出血を伴う「皮膚変色部」が上腕内側に認められると記載されて
いたこと」,「第二には,警察や創価学会が『自殺』の動機だと主張してきた朝木
明代市議に対する「万引き」容疑が,実は,確証のない冤罪であったこと。」,
 「さらにはそうした事実の積み上げの結果,裁判所が朝木明代市議の転落死は「自
殺」ではないと認定したという事実などです。」などと記述されている。その上で,
被告乙骨の発言として「当然,導き出される結論は,朝木明代市議の転落死は「他
殺」だったということです。」との記述が,また,朝木直子の発言として「この

                  −16 −


「鑑定書」が出てきたことで,「他殺」であることが客観的に証明されたと考えて
います。」との記述がされている。
 本件記事中の見出し及び本文の記載内容等は上記のとおりであって,これを一般
読者の普通の注意と読み方を基準に読解すると,朝木市議転落死事件が,同市議の
自殺によるものではなく,同市議の活動を快く思わない何者かによる他殺であると
の印象を与えるものと認められる。
 また,上記1認定のとおり,本件記事の本件問題部分より前の記述部分には,原
告の名称を上げ,原告に係る記述をしている部分が複数あるが,その中には,捜査
を担当する検察官が原告の関係者であるから「司法解剖すらも遺族に遺体を検証さ
せないための仕掛けだったのではないか。」どの趣旨の記述部分や「朝木さんを敵
視していた創価学会」との記述部分,あるいは,「創価学会が主張する「自殺」説
を根底から覆す新事実が発表」されたり,「創価学会が「自殺」の動機だと主張し
てきた朝木明代市議に対する「万引き」容疑が,実は,確証のない冤罪であった」
との記述部分があって,これを読んだ一般読者は,原告が上記の「朝木明代市議の
活動を快く思わない何者か」に当たるのではないかとの印象を持つに至るものと認
められる。
 そして,これに続いて,本件記事は,被告矢野の発言として,原告が,同7年9
月12日,講談社発行の「週刊現代」(同月23日号)に掲載された「東村山女性
市議『変死』の謎に迫る・夫と娘が激白!『明代は創価学会に殺された』」と題す
る朝木市議転落死事件に関する記事が原告の名誉を毀損するとして,記事を掲載し
た株式会社講談社と同記事にコメントを寄せた朝木明代市議の夫である朝木○○,
朝木直子を刑事告訴したが,東京地検ハ王子支部は,同10年7月15日に上記告
訴事件を不起訴処分にした旨の記述,同じく被告矢野の発言として本件問題部分の
記述がされ,その中に本件検察官発言に係る記述(「告訴から3年間,十二分に捜
査した結果,創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定できないということ
で,不起訴の処分を決めたんですよ」)がされ,本件問題部分に続けて,「井田弁

                  −17−


護士はその後,創価学会に対する別件の裁判に提出した陳述書で,この検察の処分
の時期を偽るなどしてそうした会話はなかったと否定しています。しかし検察官は
不起訴理由のーつに関与についての疑惑がある旨,指摘しました」との記述がされ
ている。
 以上のとおり,本件記事中の本件問題部分より前の記述部分は,一般読者に対し,
朝木市議転落死事件が,同市議の自殺によるものではなく,同市議の活動を決く思
わない何者かによる他殺であり,しかもその何者かは原告ではないかとの印象を与
えるものであるところ,これに続く本件検察官発言を含む被告矢野の発言に関する
記述を併せて,これを一般の読者の普通の注意と読み方を基準に読解すると,本件
記事は,朝木市議転落死事件は自殺ではなく他殺であり,これに原告が関与してい
るとの事実を摘示し,もって,一般人にその旨の印象を与えるものであると認めら
れる。そして,上記の事実摘示が原告の社会的評価を低下させることは明らかであ
るから,本件記事は名誉毀損性を有するというべきである。
 被告乙骨らは,本件記事は,特定の誰かを朝木市議転落死事件の犯人であると名
指しするものではなく,このことは本件記事全体の構成及びその表現に照らして明
らかであるから,本件記事は原告に対する名誉毀損とはならない旨主張する。しか
し,上記認定のとおり,本件記事は朝木市議転落死事件が他殺であるとし,原告の
名称を上げて原告に係る複数の記述をしつつ,「創価学会側(信者)が事件に関与
した疑いは否定できない」との本件検察官発言を掲載するという構成をとることで,
まさに原告という特定の団体が朝木市議転落死事件に関与していたとの事実を摘示
しているというべきであるから,被告乙骨らの上記主張は失当である。
 また,被告矢野は,本件問題部分等を含む本件記事を読んだ一般読者が,仮に朝
木市議転落死事件が他殺事件であり,これに原告が関与していたとの印象を持つと
しても,それは,単に本件問題部分等を読んだからではなく,本件雑誌中に掲載さ
れ,明らかに一般の読者に上記のような印象を与える「最も印象づけられる記事」
というべき「『怪死』事件との関連性を窺わせる『二つの報道』と『―つの投

                  −18 −


書』」と題する特集記事をも読むからにほかならない旨主張する。しかし,本件問
題部分を含む本件記事が,それだけで一般の読者に対し,原告が朝木市議転落死事
件に関与しているとの印象を与えるものであることは上記のとおりであるから,被
告矢野の上記主張も失当というべきである。
 さらに,被告矢野は,自らが発言した部分以外の記述について責任を負ういわれ
はない旨主張する。しかし,本件記事は冒頭部分を除き,被告乙骨,被告矢野及び
朝木直子の対談形式で掲載されており,被告矢野の発言は,それまでの文脈や記述
内容あるいは他者の発言を前提としてあるいはそれに対応してされているものであ
る。そして,上記認定のとおり,被告矢野は,本件記事のうち座談会形式部分につ
いては本件雑誌発刊前に事前に目をとおして,加筆訂正を加えるなどしていたので
ある。そうすると,被告矢野は,自ら発言した部分以外の部分についても責任を免
れる得るものではないというべきであるから,被告矢野の上記主張は採用できない
(なお,被告矢野は,本件検察官発言部分が真実であることなどを理由として,本
件問題部分等は名誉毀損性を有しないなどとも主張するが,記述内容の真実性は当
該記述が原告の社会的評価を低下させ名誉毀損性を有するか否かの判断とは関係し
ないものである。)
 (2) 上記(1)のとおり,本件記事は,朝木市議転落死事件が他殺であり,
これに原告が関与しているとの事実を摘示し,もって,原告の社会的評価を低下さ
せ,その名誉を毀損するものというべきであるが,一般に,事実を摘示しての名誉
毀損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専
ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実がその重要な部分について真実
であることの証明があったときには,その行為には違法性がなく,仮に,その事実
が真実であることの証明がないときでも,行為者においてその事実を真実と信ずる
について相当の理由があれば,その故意又は過失は否定されることになる。
   ア 公共性,公益目的の有無
     本件記事は,東村山市議会議員であった朝木明代が雑居ピルから転落死

                  −19−


した事件に関し,それが他殺であることを明らかにする趣旨で掲載されたものであ
るから,その内容は社会の正当な関心事として公共性を有し,また,このような記
載がされた目的は専ら公益を図るためであったものと認められる。
   イ 真実性,相当性の有無
     上記のとおり,本件記事は,朝木市議転落死事件は自殺ではなく他殺で
あり,これに原告が関与しているとの事実を摘示するものであるから,上記の真実
性あるいは相当性の立証の対象となる摘示事実の重要な部分は,原告が朝木市議転
落死事件に関与した事実ということになる。
 被告らは,本件摘察官発言が真実であることの根拠として,@被告矢野が現認し
た事実であることのほか,A上記発言は,本件雑誌が発行される以前から東村山市
民新聞等に掲載されていたにもかかわらず,これに対し原告が訴訟を提起するなど
の対抗手段をとっていなかったことや,井田弁護士が,裁判所に提出した陳述書
 (乙イ1及び2号証)に虚偽を記載してまで上記発言を否定しようとしたことは,
いずれも,原告自身において上記発言が真実であると自認している証左であると主
張し,被告矢野本人尋問の結果中にはこれに沿う供述部分がある。
 しかし,被告矢野は,上記認定のとおり,自ら現認したと主張する担当検察官の
発言は本件不起訴処分がされた平成10年7月15日直後には,東村山市民新聞第
97号(平成10年9月1日付け)や別件訴訟の本人尋問(平成11年11月15
日実施)においては,原告が,朝木市議転落死事件そのものではなく,上記事件に
至るまでの事件・嫌がらせに関与した疑いは否定できないとの趣旨であると述べて
いたところ,東村山市民新聞第1 2 5号(平成14年4月30日付け)以降は,
 「東村山の闇」(平成15年11月10日発行),さらに本件検察官発言にあるよ
うに,原告が朝木市議転落死事件そのものに関与したとの趣旨であると主張するよ
うになったもので,被告矢野の検察官の発言内容の趣旨に関する供述には著しい変
遷があり,また,被告矢野は,その本人尋問において,同10年7月5日に担当検
察官と井田弁護士との間でされた会話について,本件検察官発言以外に特に記憶し

                  −20−


ていない旨供述するが,これは現場で検察官の発言を聞いていたとすれば不自然な
供述といわざるを得ないのであり,加えて,井田弁護士は,本件における証人尋問
において,担当検察官が上記のような発言をした事実はない旨明確に記述している
ことにも照らすと,本件検察官発言を現認したとする被告矢野の供述は信用するこ
とができず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。
 また,上記1認定のとおり,原告は,本件検察官発言が本件雑誌が発行される以
前に東村山市民新聞等に掲載されていたにもかかわらず,これらに対して訴訟を提
起するなどしていないが,このような事情をもって,原告において上記発言が真実
であると自認していることの証左であるなどということもできない。
 さらに,上記1認定のとおり,井田弁護士が別件訴訟で書証として提出した陳述
書には,「以上が私と担当検察官との主な会話の内容であり,上記の会話の内容か
ら明らかなように,担当検察官が私に対し,「創価学会側が事件に関与した疑いは
否定できないことから,不起訴の処分を決めた」と発言した事実は一切ありません。
したがいまして,検察官の不起訴処分の理由も「創価学会側が事件に関与した疑い
は否定できない」からでないことは明らかであり,控訴人の主張は事実と全く異な
ります。このことは,その後東京地検が朝木明代氏の転落死事件そのもについて捜
査し,平成9年4月14日に「自殺の疑いが強く,他殺の確証は得られなかった」
と事実上自殺と断定し,捜査を終結する旨の発表をしていることからも明らかだと
思います。」との陳述記載があるところ,検察官が本件不起訴処分を決めたのは平
成10年7月15日であるから,上記記述中の「その後」という表現はその文脈か
らすると必ずしも適切とはいえない。しかし,上記陳述書には,「刑事告訴は,当
職が告訴代理人として行いましたが,平成10年7月15日,東京地検ハ王子支部
は,上記刑事告訴について不起訴処分にするとの決定をしました」と,本件不起訴
処分の日が正しく明示されているのである。そうすると,上記のように適切でない
表現が使用されていたからといって,これをもって,被告らが主張するように,井
田弁護士が本件検察官発言が虚偽であることを証するために,殊更に陳述書に虚偽

                  −21 −


記載を行ったものと認めることはできない。よって,井田弁護士が作成した陳述書
中に一部事実と異なる記載があることを理由に,上記陳述書の記載内容が虚偽であ
るとする被告らの主張も失当である。
 以上のとおり,被告らが本件検察官発言が真実であることの根拠とするところは,
いずれもこれを採用することができず,他に本件検察官発言を真実であると認める
に足りる証拠はない。
 被告らは,本件雑誌に本件検察官発言と併せて「井田弁護士はその後,創価学会
に対する別件の裁判に提出した陳述書で,この検察の処分の時期を偽るなどしてそ
うした会話はなかったと否定しています。」と記載して,記事の客観性,公平性を
保っているから,本件検察官発言を真実であると信じるにつき相当性がある旨主張
する。しかしながら,上記被告矢野の発言は,「検察の処分を偽るなどして」との
表現から明らかなように,内容的には井田弁護士及び同人が訴訟代理人をつとめる
原告に対する批判の趣旨でされたものであるから,上記のような記述がされている
からといって,本件記事の客観性,公平性が保たれているなどとはいえない。また,
上記のとおり,被告乙骨は,本件検察官発言を掲載するに当たり,被告矢野に対す
る取材しか行っていないが,これは,上記発言を含む本件記事が,原告が朝木市議
転落死事件に関与したとの極めて社会的影響の大きい事実を摘示するものであるこ
とに照らすと,裏付け取材として十分なものであったとは言い難い。そうすると,
被告らの本件検察官発言を真実であると信ずるについて相当の理由があった旨の主
張は理由がなく,他にこれを認めるに足りる証拠もない。
 以上のとおりであって,朝木市議転落死事件が他殺であり,これに原告が関与し
ているとの摘示事実につき,その重要な部分について真実であることの証明はなく,
また,被告らにはこれを真実と信じたことについて相当の理由もないから,被告ら
は,原告に対し,連帯して名誉毀損による不法行為責任を負うというべきである。
 (3) 賠償額及び謝罪広告の要否
   ア 本件記事は,朝木市議転落死事件が他殺であり,原告がこれに関与して

                  −22−


いると一般読者に強く印象付けるものであり,宗教法人たる原告に対する著しい社
会的評価の低下をもたらす事実を摘示する内容のものである。そして,本件雑誌が
全国で約4000部発行されており,政界やマスコミ関係者にも配布されるもので
あること,そして,上記1(1)認定の雑誌「FORUM21」の性格等,本件に
顕れた諸般の事情を総合考慮すると,原告が被告らの名誉毀損行為により被った無
形の財産的損害は150万円と認めるのが相当である。
 また,被告らの原告に対する名誉毀損行為により原告が本件訴訟代理人弁護士ら
に支払うこととなった弁護士費用のうち,上記名誉毀損行為と相当因果関係にある
損害は20万円と認めるのが相当である。
 よって,被告らは,原告に対し,上記不法行為に基づく損害賠償として合計17
0万円の支払義務がある。
   イ 次に,被告らに名誉回復処分として謝罪広告の掲載を命じる必要がある
か否かについて検討する。
 上記アのとおり,本件記事は殺人事件という重大犯罪に原告が関与したなどとす
るもので,原告に著しい社会的評価の低下をもたらす事実を摘示するものであるこ
と等の本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,原告の名誉を回復するには上記
金銭賠償だけでは十分ではなく,そのための適当な処分として被告らに謝罪広告の
掲載を命ずるのが相当である。もっとも,本件記事の内容や本件雑誌の性格等,本
件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると,被告らには,本件記事が掲載された被告
会社発行の雑誌「FORUM21」上への謝罪広告の掲載を命ずれば足り,原告の
請求する聖教新聞全国版紙上にまで謝罪広告の掲載を命ずる必要性はないというべ
(きであ :T-J補足)り,その文言,条件についても,別紙4及び5記載のものを掲載すれば足りるとい
うべきである。
 3 結論
   以上によれば,原告の請求は主文第1,2項の限度で理由があるからこれを
認容し,その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文の

                  −23−


とおり判決する。
     東京地方裁判所民事第18部

         裁判長裁判官       原     敏  雄


            裁判官       飯  田  恭  示

   裁判官倉成章は転補につき署名押印することができない。


         裁判長裁判官       原      敏  雄

(-24- :T-J補足)



別紙1(手書き)

(縦書き、上下2段組:t-j補注)
-------見出し-------
特集
        検証―
新事実が明らかになった
     「東村山事件」
-------------------
座談会
やはり「他殺」だった
朝木明代東村山市議怪死事件
-------------------
  朝木直子
(東村山市議会議員)
  矢野穂積
(東月山市議会議員)
  乙骨 正生
 (ジャーナリスト)
-------見出し-------(t-j補注)

 東京都東村山市で、創価学会による人権侵害問題などに
精力的に取り組んでいた朝木明代市議が、西武新宿線東村
山駅東口にある雑居ビルから転落して死亡したのは平成7
年9月2日未明のこと。それから早くも8年余の歳月が経
過した。この転落死について朝木さんの遺族や関係者は、
事件は朝木さんの活動を快く思わない何者かによる「他殺」
であると主張。警察・検察に厳正な捜査を求めるとともに、
自らも全力で真相究明に取り組んだ。
 しかし捜査を担当した警視庁東村山署の幹部は、事件発
生当初から事件は「自殺」との広報を繰り返した挙げ句、
平成7年12月に「犯罪性はない」として捜査を終了。同様
に東京地検も平成9年4月に「自殺の疑いが濃く、他殺の
確証を得られなかった」として捜査を終結した(同事件を
所轄する東京地検ハ王子支部で実際に捜査に当たった信田
昌男検事は、創価学園・創価大学出身の創価学会エリート。
そして信田検事の上司にあたる地検八王子支部の吉村弘支
部長検事もまた、創価学会の副会長の妹を妻にしている創
価学会エリートだったことが、事件後、半年を過ぎた平成
8年春に判明)。
 こうした警察・検察の動きを受けて朝木さんを敵視して
いた創価学会は、事件発生直後から事件を「自殺」、それ
も朝木明代市議に対してかけられていた「万引き披疑事件
を苫にしての自殺」との大宣伝を繰り返し、検察が捜査終
結宣言を出した直後には、機関紙「創価新報」に「警察・

        8


検察が自殺と断定」との大見出しをつけた記事を掲載。同
紙を東村山市内で全戸配布するなど、一貫して朝木さんの
名誉と遺族・関係者の心情を踏みにじる熾烈な攻撃を繰り
広げた。
だが、その朝木明代市議の転落死事件について、遺族・
関係者による真相究明の努力の結果、事件は警察・検察が
発表したような「犯罪性はない=自殺」ではなく、「他殺」
だったことが、新事実の判明により明らかになった。
 朝木明代さんの長女である朝木直子東村山市議と、朝木
明代さんの同僚だった矢野穂積東村山市議は、昨年11月に
「東村山の闇 「女性市議転落死事件」8年目の真実」(第
三書館)なる一書を上梓。その中で新事実を公表し、朝木
明代市議の転落死が「他殺」に間違いはなく「謀殺」事件
であると主張している。
 事件の真相究明に尽力する朝木直子、矢野穂積の両市議
と、朝木明代市議の転落死事件について「怪死」を出版し、
事件は「他殺」の可能性が高いことを指摘してきた本誌発
行人の乙骨正生が、新事実に基づき事件を険証した。

 遺体に残されていた「争った跡」

 乙骨 昨年11月、朝木直子さんと矢野さんは、「東村山
の闇」を上梓されました。その中で警察や創価学会が主張
する「自殺」説を根底から覆す新事実を発表されています。
 明らかになった新事実とは、まず第一には朝木明代市議
の遺体を司法解剖した「鑑定書」に、第三者と争った跡で
ある皮下出血に伴う「皮膚変色部」が上腕内側に認められ
ると記載されていたこと。
 第二には、警察や創価学会が「自殺」の動機だと主張し
てきた朝木明代市議に対する「万引き」容疑が、実は、確
証のない冤罪であったこと。
 さらにはそうした事実の積み上げの結果、裁判所が朝木
明代市議の転落死は「自殺」ではないと認定したという事
実などです。
 警視庁東村山署の千葉英司副署長は、事件発生当初から
マスコミの取材に対して「自殺」との説明を繰り返してい
ましたが、その根拠の一つに第三者と争った跡がないこと
を挙げていました。ところが、司法解剖の「鑑定書」に争
った跡である「皮膚変色部」の存在が記載されていたこと
で、この「自殺」の根拠が根底から崩れた。当然、導き出
される結論は、朝木明代市議の転落死は「他殺」だったと
いうことです。これは「自殺」、「他殺」を判断する上で、
決定的ともいえる事実と思われますが、「鑑定書」には具
体的にどのように書かれていたのでしょうか。
 朝木 母の司法解剖の「鑑定書」が私ども遺族・関係者

9 座談会/やはり「他殺」だった朝木明代東村山市議怪死事件(脚見出し)

−25−




の手に入ったのは、事件から4年半を経過した平成11年4
月28日のことでした。当時、私どもは事件の真相究明のた
めに、国や東京都(警察)などを相手取り、各種の訴訟を
提起していましたが、その中の救急隊に関する訴訟で被告
の東京都側が「鑑定書」を証拠として提出してきたのです。
平成10年7月21日に作成されたと記されている「鑑定書」
は13ページからなり、そこには「被疑者氏名不詳に対する
殺人被疑事件につき」司法解剖が行われた旨の記載があり、
「死因、創傷の部位・程度、凶器の種類・その用法、死後
の経過時間、血液型・その他参考事項」についての鑑定が
なされていました。その第三章の「創傷の部位・程度」の
「説明」の項の中に問題の記載があったのです。それは次
のような内容でした。
「左上腕部後面、肘頭部の上左方4センチメートルの部を
中心に、2×2・5センチメートルの紫青色皮膚変色部。
上腕部内側下1/3の部に、上下に7センチメートル、
幅3センチメートルの淡赤紫色及び淡赤褐色皮膚変色部。
加割すると皮下出血を認める。
 (以下、右上腕部についての記載略)」
 専門用語のため分かりにくいかもしれませんが、要する
に左右の上腕の各部に腕を強くつかんだり、争った時にで
きる皮下出血による皮膚変色の痕が残っていたということ
です。殺害事件や傷害事件など他人が介在することによっ
て生じる犯罪事件では、もみ合ったり強制的につかまれる
などした場合には、上腕の内側部分に皮下出血を伴う「皮
膚変色部」が残るのが普通であり、法医学ではこの「皮膚
変色部」がある場合は直ちに「争った跡」と推認するのが
常識だといいます。
 そこで私どもはこの「鑑定書」を法医学を専門とする医
師に見てもらい、その見解をうかがったところ、「他者に
強制的につかまれた指の跡」の疑いが濃く、「他殺」を推
認させる重要な証拠になりうるということでした。ですか
らこの「鑑定書」が出てきたことで、「他殺」であること
が客観的に証明されたと考えています。
 乙骨 それにしても「鑑定書」の作成になぜ、3年近く
もの時間がかかったのか。極めて疑問です。
 矢野 おそらく「鑑定書」を作成する気がなかったのだ
と思います。また、たとえ「鑑定書」を作成しても私たち
遺族・関係者の手に渡すつもりはなかったのではないでし
ょうか。「東村山の闇」や「怪死」に詳述されていますが、
事件発生直後から「自殺」を主張していた警察には、朝木
明代さんの転落死の真相究明のための解剖の意思は毛頭な
く、あまつさえ警察OBの葬儀屋に指示して、朝木明代さ
んの遺体を家族に確認させることもせずに棺桶に入れ、さ

    10


 っさと火葬させてしまおうとしていたのです。
  しかし遺族が強く抗議し、警察が解剖をしないのであれ
 ば、遺族としては肉親の身体を解剖することは、大変辛い
 決断だけれども、自費で任意解剖をするとの強い意志を示
したことから、警察は検察官と打ち合わせた結果、「殺人
被疑事件」として司法解剖を行いました。当初はその決定
 に期待を持ちましたが、担当の信田検事と吉村支部長検事
 が創価学会幹部であり、創価学会コンビによって捜査の指
 揮が執られていたことが判ってから後は、司法解剖すらも
 遺族に遺体を検証させないための仕掛けだったのではない
 かと思うようになりました。ですから、正直、「鑑定書」
 の入手はおろか作成されることは難しいと思っていまし
 た。それだけに「鑑定書」が手に入った際には、これで真
 相糾明のための手がかりを得たという思いを強くしました。
 朝木 私たちは捜査機関じゃありませんから、なかなか
手がかりをつかむことが難しいんです。しかしなんとか真
相を究明したいとの思いから、先ほど申し上げたように、

--------プロファイル--------(t-j:補注)
(あさき・なおこ)1967年東京都東村山市生まれ 慶應義塾
大学卒。東村山市議会議員。母・朝ホ明代市議の2回連続トップ
当選を引き継ぎ、現在2回連続トップ当選中。
(やの・ほづみ)1947年愛媛県松山市生まれ。東京外国語大
学卒。東村山市議会議員。
--------プロファイル--------(t-j:補注)

各種の訴訟を提起し、なんとか手がかりをつかもうと努力
しました。その一つが東京都を被告とする救急隊事件とい
う訴訟だったのですが、「鑑定書」はこの訴訟の過程で被
告の東京都が裁判所に証拠申請、国が提出し、実に重大な
展開となりました。
 矢野 実は四年半も経ってから「鑑定書」を提出した背
景にはこんな伏線があるのです。平成9年の4月に東京地
検が「他殺の確証は得られなかった」として、捜査の終結
を発表した後、警察と検察が自殺と断定したという見出し
をつけた「創価新報」が東村山市内で全戸配布されました。
そこで私たちは、創価学会と「創価新報」の根拠となる判
断を示した東京都(警察)、国(検察)を相手取って名誉
毀損に基づく損害賠償請求訴訟を提起し、その審理の過程
で、朝木明代さんの転落死を自殺と断定する証拠はなにも
ないと追及したのです。検察は「自殺の疑いが濃い」とし
て捜査を終結したが、それは東村山書の杜撰な捜査報告を
鵜呑みにしたものであり、検察は捜査を尽くしていない。
その証拠にいまだに司法解剖の「鑑定書」すらないじゃな
いかと主張しました。
 すると被告の国側は、平成10年暮れの準備書面の中で
「鑑定書は作っている」と主張してきたのです。しかしに
わかには信じられませんでしたので、「鑑定書」を作成し

11 座談会/やはり「他殺」だった朝木明代東村山市議怪死事件(脚見出し)

−26−




ているとの主張は信じがたいと批判したところ、朝木直子
さんが説明したように救急隊の過失を問う訴訟で、アリバ
イを主張するかのように「鑑定書」を提出したのです。
 そしてもう一つの伏線として、この「鑑定書」が作成さ
れた平成10手7月にはこんなことがありました。「鑑定書」
が作成された日付は平成10年7月21日ですか、その1週間
ほど前の7月15日、東京地検は、創価学会が、「週刊現代」
が掲載した「東村山女性市議「変死」の謎に迫る・夫と娘
が激白!「明代は創価学会に殺された」」と題する記事を
掲載した「週刊現代」と、記事にコメントを寄せた朝木明
代さんの夫の○○さん、朝木直子さんを名誉毀損罪で刑事
告訴した事件で不起訴処分を決めています。これは私たち
が発行している「東村山市民新聞」でも詳報したのですが、
ちょうど、この日、私は別件の暴力事件についての被害状
況を説明するために東京地検八王子支部に出向き、担当検
察官と話をしていたところ、創価学会の代理人である井田
吉則弁護士から検察官に電話がかかってきました。話の内
容は、不起訴の決定に対する不満であり、不起訴にした理
由を執拗に問い質すものでしたので注意して聞いていたと
ころ、検察官は、「告訴から3年間、十二分に捜査した桔
果、創価学会側(信者)が事件に関与した疑いは否定でき
ないということで、不起訴の処分を決めたんですよ」と発
言したのです。
 井田弁護士はその後、創価学会に対する別件の裁判に提
出した陳述書で、この検察の処分の時明を偽るなどしてそ
うした会話はなかったと否定しています。しかし検察官は
不起訴理由の一つに関与についての疑惑がある旨、指摘し
ました。別件の訴訟で私たちに捜査が杜撰だと批判されて
いるので、検察としても鑑定書さえ作成してないことはま
ずいと判断したんじゃないでしょうか。
 乙骨 平成10年の7月21日という時明に「鑑定書」が作
成された理由はそれで分かりますが、東村山署と東京地検
が捜査の終結を発表したのは平成7年12月と、平成9年4
月。ということは東村山署や東京地検は「鑑定書」すら作
成されていない段階で「犯罪性はない」との結論を出して
いたということになるわけです。
 また司法解剖を担当した医師が、目視で上腕の内側に
「皮膚変色部」があることを認め、切開すると皮下出血を
認めたと書いている。当然、警察や検察の検死でも、上腕
の内側に「争った跡」である「皮膚変色部」を現認できた
はずです。にもかかわらず警察は「争った跡がない」とし
て「犯罪性はない」と説明し続けてきた。
 この二つの事実は、当初から一貫して「自殺」説を主張
していた警察、そして学会員シフトだった事件発生当時の

    12


東京地検八王子支部が、朝木明代市議転落死事件に対して
どのようなスタンスをとっていたかを象徴している。
 朝木 裁判での千葉元副署長の証言からもそうした事実
は窺うことができます。私たちは、創価学会の外郭出版社
である潮出版社が発行している月刊誌「潮」の平成7年11
月号に掲載された、「世間を欺く「東村山市議自殺事件」
の空騒ぎ」と題する記事を、名誉毀損で訴えた裁判で、母
の転落死事件の捜査指揮を執るとともに、広報の責任者で
もあった千葉元副曹長に対する証人尋問を行ったのです
が、その証言内容は本当にひどいものだったからです。
 口頭弁論では私たち原告の代理人が「鑑定書」に基づい
た尋問を行ったのですが、その際、千葉元副署長は、まず
上腕内側部に皮膚変色部がある場合は「争った跡」である
ことを認めました。しかし司法解剖を担当した医師が目視
で「皮膚変色部」を認めているにもかかわらず、自分たち
は肉眼で表面的に見ただけだから「皮下出血」はなかった
と強弁し続けました。挙げ旬、裁判長から「皮下出血があ
ったとしても、それは争ったものではないと認定したとい
うことですか」と質問されると「その通りです」と、「皮
膚変色部」があっても「争った跡」とは判断しなかったと
証言。再度、裁判長から「鑑定の結果に上腕部の皮膚変色
がある、皮下出血を認めると書いてあるが、これが事件性
との関係で特に問題がないと考えた理由は」と質問される
と、「手すりに打ったんではなかろうかと推測しておりま
す」と、根拠のない発言で、上腕部の内側に「皮膚変色部」
があったにもかかわらず「事件性」を認めなかった言い訳
を繰り返したのです。「争った跡」である「皮膚変色部」
があろうがなかろうが、なにがなんでも母の転落死を「自
殺」で処理した千葉元副署長ら警察幹部の口ぶりは、まる
で犯人グループの言い逃れのように聞こえました。

 冤罪だった「万引き」容疑

 乙骨 ところで警察や創価学会は、朝木明代市議の転落
死が「自殺」であり、その動機は転落死事件を遡ること約
3ヵ月前の6月19日に東村山駅前の洋品店から1900円
のTシャツを万引きしたとの「万引き被疑事件」(実害は
なし)で書類送検され、起訴されることを苦にしたからだ
と主張してきました。しかし、この「万引き被疑事件」に
ついても、「潮」に対する裁判の過程などでその虚構性が
次々と明らかになってきていますね。
 矢野 朝木明代さんはこの「万引き被疑事件」について、
冤罪だとして真相究明のために徹底的に闘うとの意思を殺
害される直前まで明らかにしていましたが、裁判での審理
を通じて冤罪である構図がハッキリしてきたと思います。

13 座談会/やはり「他殺」だった朝木明代東村山市議怪死事件(脚見出し)

−27−




この占についても「東村山の闇」で詳述していますが、要
するに、朝水明代さんによって万引きの被害を受けたと届
け出た洋品店の戸塚節子店主が供述する犯人が看ていたと
いう服装と、万引きがあった当日のG月19日午険に、朝本
明代さんが着ていた叩が粂く違ぅといぅことが明らかにな
ったのです.
 この日、朝ホ明代さんは、市役所で行われた注設水道委
員会に出席、その後総務委員会を傍聴した後の午後2時10
分前後に、東村山駅前にあった拓殖銀行東村山支店で入金
の振り込みを行っており、その姿が防犯ビデオに撮影され、
残されていました。
 その映像をスチール写具に落としたものが警察の捜査報
告に添付され、検察に送られており、私と朝木直子さんは、
その写真を信田検事から兄せてもらっていました。ですか
ら朝木明代さんが当日、着ていた服は、残されている洋服
の中からすぐに特定できました。それは縦にストライプの
人っているベージュのパンツスーツでした。ところが戸塚
店主は犯人の服装は「白灰色っぼいグリーングレー」だっ
たと供述していたのです。
 ですから私どもは警察に対して再三にわたって捜査報告
にヽ添付されている写真を証拠として提出するよう求めまし
た。ところが警察は頑として写真を提出しないのです。
 そこで私たちは拓殖銀行東村山支店にお願いをして、現
場で再現写真を撮影したのです。朝木直子さんに万引き事
件当日に朝木明代さんが着ていた服を着てもらい、同じ防
犯ビデオで映像を撮影。それをスチール写真におとしまし
た。その写真は信田険事から見せられた捜査報告に添付さ
れている写真とソックリでした。その写真を、創価学会と
東京都(警察)を提訴した事件の法廷に証人として出廷し
た戸塚店主と千葉元副署長に示して尋問したのです。
 すると戸塚店主は、明確に「服装が違う」と証言しまし
た。戸塚店主は洋品店の経営者であるため洋服には詳しい
とした上で、ジャケットやブラウスの襟が違い、ジャケッ
トにストライプは入っていなかったと詳細に証言したので
す。これに対して千葉元副署長は、写真を見せた途端、絶
句しました。おそらく出るはずもない「本物の写真が出て
きた」と思って驚いたのでしょう。出てきた第一声は「鮮
明ですね」という言葉でした。その上で捜査報告書の写真
と「似ている」と証言したのです。
 この事実は、警察は戸塚店主の供述している犯人の服装
と朝木明代さんが当日着ていた服装が違うということを認
識していたということを示しています。だから捜査報告の
写真の提出を断固、拒否。千葉元副署長は出るはずもない
写真が出てきたことに絶句したんだと思われます。

    14


 朝木 しかもこの事件には戸塚店主以外に目撃者が3人
いるのですが、そのうちの一人であるSさんのことを警察
はひた隠しにしていたのです。というのもSさんの目撃し
た犯人の服装は「黒っぼいスーツ姿」だったということで
あり、それは戸塚店主の供述を否定するものであるととも
に、当日、母が着ていた服とも異なっていたからです。だ
から警察はこのSさんのことを隠さざるを得なかったのだ
と思います。ところが私たちの調査の結果、その目撃者が
Sさんであるということが特定できました。そこで、先の
証人尋問の際、千葉元副曹長に目撃者がSさんであること
を指摘したところ、千葉元副署長は「どうしてSさんだと
わかったのですか」と動揺を隠せませんでした。
 一連の事実は、平成7年6月19日の万引き事件の犯人は、
母ではないことを物語っています。警察は、母が犯人では
ないことを知っていながら、自分たちのシナリオにとって
都合の悪い事実をひた隠しにして、むりやり書類送検。検
察もこれを受理したのだと思われます。
 しかし、こうした事実審理の結果、東京地方裁判所は、
母の死を「万引きを苦にしての自殺だった」と書いた「潮」
の記事に対する名誉毀損訴訟の判決において、母の転落死
は「自殺}ではなく、「万引き」についても母を犯人とす
る証拠はないと次のように認定しました。
 「(鑑定等の)事実を総合すると、なお亡明代が自殺した
との事実が真実であると認めるには足りず、他にこれを認
めるに足りる証拠はない」
 「亡明代を本件窃盗被疑事件の犯人と断定するに足りない」
  また、母と矢野さんが「万引き」についてアリバイ工作
をしたかのような警察や創価学の主張についても、「同事
実を認めるに足りず、他にこれを認めるに足りる証拠はな
い」と否定しており、千葉元副署長の供述は信用できない
としています。
 この東京地裁の判決は確定しています。
 乙骨 司法判断で朝木明代市議の転落死が「自殺」では
ないと確定したこと。また、朝木明代市議が「万引き」の
犯人ではないことが確定したことの意味は非常に大きいと
思います。では誰が、朝木明代市議を殺したのか、「万引
きを苦にしての自殺」とのシナリオを描いたのは誰なのか、
今後はその真相究明が焦点になる。
 矢野 時効まであと7年。いま、ようやく真実解明の端
緒についたとの思いです。 今回、出版した「東村山の闇」
はその中間報告です。朝木明代さんに謀殺事件の全容を解
明した最終報告ができるよう頑張りたいと思っています。
 朝木 そして犯人の険挙です・母の言葉ではありません
が「真相究明の為、徹底的に闘います」。

15 座談会/やはり「他殺」だった朝木明代東村山市議怪死事件(脚見出し)

−28−




(別紙2)
              謝 罪 広 告
 矢野穂積、乙骨正生及び有限会社フォーラムは、「FORUM21」の平成1
6年1月15日付発行の同誌46号で「やはり『他殺』だった 朝木明代東村山
市議怪死事件」との大見出しの下に、あたかも朝木明代市議の転落死に貴会が関
与しており、貴会が同市議の殺害犯人であるかのような記事を掲載しました。
 しかし、朝木明代市議の転落死と貴会との間には何の関係もなく、上記記事内
容は全て虚偽であります。
 よって、私どもは、虚偽の事実を記載して、貴会の名誉を著しく毀損したこと
に対し、謹んで陳謝の意を表するとともに、今後二度とこのような誤りを犯さな
いことを誓約いたします。

 平成   年   月   日

                   矢   野   穂   積
                   乙   骨   正   生
                   有限会社フォーラム
                   代表者取締役 乙 骨 正 生
創   価   学   会   殿

−29−





(別紙3)
 掲載の条件
  @ 聖教新聞について
    掲載面  2面下欄広告欄に掲載する
    スペース スペース5段×19センチメートル
    活字の大きさ 見出し「謝罪広告」は、5倍明朝体活字
    本文・日付は、2倍角明朝体活字
    氏名・宛名は3倍明朝体活字
  A 「FORUM21」について
    掲載面  表紙裏(表二)
    活字の大きさ 見出し「謝罪広告」は、16級明朝体活字
    本文・日付は、13級明朝体活字
    氏名・宛名は、16級明朝体活字
  B 日付は、判決確定の日

−30−




(別紙4)
               謝 罪 広 告
 矢野穂積,乙骨正生及び有限会社フォーラムは,平成16年1月15日付け発行
の「FORUM21」通巻46号において,「やはり『他殺』だった 朝木明代東
村山市議怪死事件」との見出しの下,あたかも朝木明代市議の転落死に貴会が関与
しているかのような記事を掲載しました。
 しかし,上記のような疑いがあるとしたことは根拠に欠けるものであり,上記の
記事が掲載されたことにより,貴会の名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳
謝の意を表します。

 平成   年   月   日

                      矢  野  穂  積
                      乙  骨  正  生
                      有限会社フォーラム
                      代表取締役 乙骨正生
創 価 学 会 殿

−31−




(別紙5)

1 掲載面 表紙裏

2 活字の大きさ 見出し「謝罪広告」は,16級明朝体活字
         本文・日付は,13級明朝体活字
         氏名・宛名は,16級明朝体活字

3 日付は,判決確定の日とする。

−32−




これは正本である。


平成18年5月15日


  東京地方裁判所民事第18部


    裁判所書記官 小 窪 孝 紀

(−33−)


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