せと弘幸blog『日本よ何処へ』出張所の掲載記事、「平成20年9月5日 東京地裁 判決」
(平成20年9月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 村上 淳一郎)をOCR処理後、改行等の体裁を整えたもの。
(背景の所為で読みにくい 東村山市民新闇 ウェブ版のこちらのページは、これを元にOCRしたもののようです。)
太字、赤字、および <>囲みは、処理中に気付いたものをTomatotic-jelly が、強調、メモ書きしたもの。
頁区切りは、頁末に「‐数字‐」で挿入してあります。
OCRの都合で、文章中の数字は全角に統一し、空白文字は読み取りが不正確なため体裁主体で修正してあります。
OCR後の校正漏れが、あるかもしれません。
以下、処理結果>>>>>>
平成20年9月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 村上 淳一郎 平成19年(ワ)第23067号 発信者情報開示等請求事件 (平成19年7月4日 口頭弁論終結) 判 決 東京都東村山市○○町○−○○−○○−○○○ 原 告 矢 野 穂 積 東京都東村山市○○町○丁目○番○号 原 告 朝 木 直 子 上記同名訴訟代理人弁護士 中 田 光一知 同 福 間 智 人 東京都渋谷区道玄板○丁目○○番○号 被 告 株式会社サイバーエンジェント 同代表者代表取締役 藤 田 晋 同訴訟代理人弁護士 波 多 江 崇 主 文 1 被告は、原告らに対し、別紙書き込み目録1及び2記載の各書き込みの発信者に係る注所、氏名及びメールアドレスを開示せよ。 2 被告は、原告らに対し、各50万円及びこれに対する平成20年2月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、別紙書き込み目録1記載B及び同2記載Bの各書き込みにつき送信を防止する措置を行え。 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 ‐1‐ 5 訴訟費用はこれを3分し、その1を原告らの、その余を被告の負担とする。 6 この判決は、第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主文1項と同旨 2 被告は、原告らに対し各250万円及びこれに対する平成20年2月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、被告の提供するブログ「Ameba」(アメーバブログ)を使用して開設したブログ「おはら汁」(URL http://ameblo.jp/oharan)につき送信を防止する措置を行え。 4 被告は、別紙謝罪広告目録記載の被告の管理運営するホームぺージ上のトップぺージに同目録記載の謝罪広告を同目録記載の条件により平成19年7月3日から別紙書き込み目録1及び2記載の各書き込み掲載記事の削除日までに相当する日数掲載せよ。 第2 事案の概要 1 争いのない事実等(末尾に証拠等の記載のない事実は、当事者間に争いがない。) (1) 原告らは、いずれも東村山市議会議員である。 被告は、インターネットのプロバイダ「特定電気通信役務提供者)であり、インターネット上で一般利用者に対してブログ「Ameba」(アメーバブログ)(以下 「被告ブログ)という、)を無料で提供しそのブログに広告を掲載することで広告収 <ここで文章が途切れているようだ。 スキャニング・ミスか?> −2− (2) 被告は、荒井禎雄と名乗る者(以下「本件発信者」という」に対し、「Ameba」 (アメブロ)を使用してインターネット上にブログ「おはら汁」(URL http://ameblo.jp/oharan)(以下「ブログおはら汁」という。)を開設することを許可し、不特定の者に対し、送信している。 (3) 本件発信者は、ブログおはら汁において、別紙書き込み目録1記載Aの記事に同Bの書き込みを掲載し、 別紙書き込み目録2記載Aの記事に同Bの書き込み(以下、別紙書き込み目録1記載Aの記事及び同2記載Aの記事を併せて「本件記事」といい、別紙書き込み目録1記載Bの書き込み及び同2記載Bの書き込みを併せて「本件書き込み」という。)を掲載した。 (4) 被告は、被告ブログの利用者に対し、利用規約において、ブログヘの名誉毀損記事等の掲載を禁止し、違反した場合には、当該記事、ブログ等の削除を含めた送信防止措置を行うことを同意させた上で被告ブログの利用を承認している。 (5) 原告らは、本件発信者に対し、原告らの管理するホームページ上で、別紙書き込み目録1記載Aの記事の掲載直後に本件発信者の住所及び氏名を明らかにするように求めたり、平成19年7月1日付けで本件書き込みの削除及び謝罪を求めたが、本件発信者は、いずれもこれに応じず、おはら汁上で、警視庁の住所及び電話番号を本件発信者の住所及び電話番号であると称した(甲3、乙3の6、弁論の全趣旨)。 (6) 当裁判所は、平成20年2月21日、各当事者双方に送付した書面で、本件書き込みは、原告らを指して、執拗に 「バカ」、 「キチガイ」といった差別的な表現を繰り返すものであり、名誉毀損該当性について、論評としてのいささか穏当を欠くという表現といった程度にとどまらない攻撃的な表現であることも認められる −3− ところであるとして、被告が送信防止措置を行う義務違反による損害賠償義務を負うか、上記義務違反がある場合の損害額の判断については審理を行う必要があるが、原告らにとって、名誉毀損文言が継続的にインターネット上で閲覧しうる状態にあることを早期に是正する必要があり。名誉毀損行為を行った本件発信者との間で最終的に紛争を解決することに意義があること等を理由に、被告が本件書き込みの発信者に係る住所、氏名及びメールアドレスを開示し、本件書き込みの送信防止措置を行うことを内容とする和解に応ずることを強く勧告したが、被告は、これに応じず、現時点においても上記送信防止措置を講じていない。 (7) 平成20年7月1日現在のブログおはら汁のアクセス数は1946万9678件であり、平成19年12月16日からの約半年間でアクセス数が約179万5700件増えている。 ブログおはら汁のトップページには、「東村山市議:朝木直子・矢野穂積問題」という原告らの氏名をタイトルにしたテーマがすぐわかるように表示されており、−般読者は、そこをクリックして新しい記事から順番に表示されるページをクリックすれぼ、本件書き込みを閲覧することができる。 2 原告らは、本件書き込みが原告らの名誉を毀損すると主張して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、本件発信者に係る住所、氏名及びメールアドレスを開示すること。 被告がブログおはら汁の送信防止措置を行う義務違反を理由に、不法行為による損害賠償請求権に基づき、各250万円及び上記和解を勧告する書面が送付された日である平成20年2月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合こよる遅延損害金を支払うこと、人恪権としての名誉権に基づき、ブロ −4− グおはら汁の送信防止措置を行うこと、不法行為に基づき、別紙謝罪広告目録記載の被告の管理運営するホームページ上のトップページに同目録記載の謝罪広告を同目録記載の条件により平成19年7月3日から別紙書き込み目録1及び2記載の各書き込み掲載記事の解除日までに相当する日数掲載することを求めている。 3 争点及びこれに関する当事者双方の主張 (1) 本件書き込みが原告らの名誉を毀損するか(争点(1)) (原告らの主張) ア 本件書き込みは、原告らに対し、執拗に「バカ」、「キチガイ」、「狂人」との表視を繰り返しており、原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものであることが明らかである。 イ 本件書き込みの前に多数の論議、批判が原告らに対してされていたとしても、本件書き込みが原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものでないということはできない。 (被告の主張) ア 本件記事は、原告らが薄井議員の辞職勧告決議の要求を行ったことなどの政治活動を批判するものであり、原告らに対する人格的評価に向けられたものではない。具体的には、以下のとおりである。 本件書き込みの中の「バカ」は、本件発信者の原告らに対する強く批判的な立場を反映した人称代名詞としての役割しか果たしておらず、単なる侮辱又は悪ロ程度のものであり、一般人が「バカ」の本来的な意昧である知能が劣り、愚かであるとの印象を持つとはいい難いので、原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものではない。 ‐5‐ 本件書き込み中の「こんな脳味噌にウジがわいたアホ」は、「アホ」が「バカ」と同様の意味を持つ上に「こんな脳味噌にウジがわいた」も、批評に用いる表現としては必ずしも適切とはいい難いが、あくまで「アホ」にかかる比ゆ的な表現にすぎず、原告らの社会的な評価を低下させ、その名誉を毀損するものではない。 本件書き込み中の「東キチガイ新聞」は、原告らではなく、東村山市民新聞に向けられたものであり、原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものではない。 本件書き込み中の「キチガイババア」は、原告朝木直子に対する批評に用いる語としては行き過ぎの嫌いはあるが、「バカ」等と同様に原告朝木直子に対する批判的な立場を表したのにすぎず、原告朝木直子の社会的な評価を低下させ、その名誉を毀損するものではない、本件書き込み中の「キチガイ臭は」、「狂人議員達」。 「狂人」については、上記「キチガイババア」と同様であり、原告らの社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものではない。 「狂っているとしかいえない問題ばかり巻き起こしている議員」についても、上記「キチガイババア」と同様であるが「狂っている」は、「問題」にかかっており、原告らの政治活動そのものの問題について述べるものであり、原告らの社会的評価とは無関係である。 イ 原告らは、薄井政美東村山市議会議員(以下「薄井議員」という。)に対する辞職勧告決議の要求という行動に及んだり、原告らに対して出された辞職勧告の請願を提出されたことで、請願人や薄井市議らに対して名誉毀損を埋由に訴訟を起こしたりしており、原告らの活動は、社会の耳目を集め、インターネット上で種々の議論や批判の対象となっているのであって、原告らの品位、行状、信用等は、既 ‐6‐ に平成7年ころから、市議会議員としての尊敬と信望を集めるものではなかったのであるから、本件書き込みによる原告らの社会的評価の低下は著しく小さい。 (2) 違法性阻却事由の有無 (争点(2)) (原告らの主張) 本件書き込みは、原告らが精神異常者又は精神病者であるとの事実を摘示するものというべきである。原告らが精神異常者又は精神病者でないことは明らかであるから、その違法性は阻却されない。 本件書き込みは、意見ないし論評であるとしても、原告らをひぼう、中傷することのみを目的としたものであり、公共の利害に関する事実に係るものということもできないし、専ら公益を図る目的に出たものということもできない。また、そのような表現を採る必要もないのであり、意見ないし論評の域を逸脱したものということができる。なお、前記のとおり、原告らは、本件発信者に対し、原告らの管理するホームページ上で、本件書き込みの削除及び謝罪を求めた。 (被告の主張) 本件記事は、原告らが薄井議員の辞職勧告決議の要求を行ったことなどの政治活動を批判するものであり、本件書き込みは、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項には当たらず、意見、論評に当たるというべきである。 本件書き込みが原告らの政治活動に対する批判であり、公共の利害に関する事実に係るものであり、専ら公益を図る目的に出たものということができる。 原告らは薄井議員の辞職勧告決議の要求を行ったことは真実である。 本件記事は、原告らの政治活動及び東村山市の問題点を指摘するものであり、原 -7- 告らの上記品位、行状、信用等、原告らは、ブログおはら汁上で反論することもできることを考慮すると、意見ないし論評の域を逸脱したものということはできない。 (3) 被告において本件書き込みにより原告らの権利が侵害されていることを知っていたか又は知ることができたと認めるに足りる相当な理由があったか(法3条1項所定の要件を具備しているか(争点(3)) (原告らの主張) 原告らは、遅くとも裁判所から前記和解勧告をされた時点で、本件書き込みにより原告らの権利が侵害されていることを知ったか、少なくとも知ることができたと認めるに足りる相当な理由があるというべきである。 (被告の主張) 前記和解勧告は、裁判所の公権的な解釈又は判断ではなく、被告は、これに従う義務もないのであり、裁判所から前記和解勧告をされた時点で、本件書き込みにより原告らの権利が侵害されていることを知ったということができないし、知ることができたと認めるに足りる相当な理由があるということもできない。 (4) 原告らの損害、名誉を回復するのに適当な処分としての謝罪広告の必要性 (争点(4)) (原告らの主張) 被告は、広告収入を確保するために、前記和解勧告にも従わずにブログおはら汁の発信防止措置も講じていないのであるから、その不法行為は極めて悪質であり、原告らの被った損害は各250万円を下らないし、被告に対して原告らの名誉回復するための適当な処分として謝罪広告の掲載を命ずることが相当である、なお、前記のとおり、原告らは、本件発信者に対し、原告らの管理するホームページ上で本 ‐8- 件書き込みの削除及び謝罪を求めた。 (被告の主張) 以下の点を考えると、原告らの損害は著しく小さい。 ア 原告らの社会的評価は、本件書き込み前から低下しており、本件書き込みによる低下は著しく小さい。 イ 本件書き込みは政治的な言論である。 ウ 被告は、類似の裁判例を参考にし、法務担当部署において本件書き込みが名誉毀損に当たるかを慎重に検討し、本件書き込みが名誉毀損に当たらないと判断したのであり、被告の過失は小さい。 エ 原告らは、ブログおはら汁上で反論することもできたのにこれをしなかった。 オ 以下のとおり、本件書き込みの情報の伝播力が弱いということできる。 ブログおはら汁については、「東村山市議:朝木直子・矢野穂積問題」の他に22個のテーマが限定されており、本件発信者は、これらのテーマについてまんべんなく頻繁に記事を書き込んでいる。ブログおはら汁に表示されているアクセス数は、ブラウザの更新ボタンを押したり、特定の記事やテーマをクリックするなどブログ内でのページ移動を行ったりするだけでカウントされる仕組みとなっている。実際に本件書き込みを閲覧した者は、上記アクセス数よりも著しく少ない。 ブログおはら汁は、一個人のブログにすぎず、信頼度が高くない。 第3 当裁判所の判断 1 本件書き込みが原告らの名誉を毀損するか(争点(1)) 第2の1の争いのない事実等、証拠(乙3の4、5)によれば、本件書き込みは、 −9− 原告らを指して、執拗に「バカ」、「キチガイ」、「狂人」との表現を繰り返したり、「脳 味噌にウジがわいたアホ」との表現をしたりしており、「東キチガイ新聞」との表現も、原告らが東村山市民新聞の編集長及び発行人であることを記載した上でこの表現に及んで いるのであるから、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、原告ら自体を指して「キチガイ」と表現しているものと理解されるものであり、「もはや狂っているとしか言えない問題ばかり巻き起こしている議員」との表現も、本件記事全体から、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準とすれば、「狂っているとしか言えない」は原告ら自体を指しで表現するものとも理解されるものであることが明らかであって、一般の読者の普通の注意と読み方とを基準に本件記事全体を読んだ場合に、本件書き込みは、原告らが市議会議員としての資質や能力に欠ける愚かな人物という否定的な印象を与えるものであり、原告らが社会から受ける客観的評価を低下させ、原告らの名誉を毀損するものということができる。 原告らの品位、行状、信用等が本件書き込み前に市議会議員としての尊敬と信望を集めるものではなかったか否かは、本件書き込みが原告らの名誉を毀損するか否かを左右しない。 2 違法性阻却事由の有無(争点(2))について (1) 当該表現が証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項を明示的又は黙示的に主張するものと理解されるときは、当該表現は、上記特定の事項についての事実を摘示するものと解するのが相当であり、上記のような証拠等による証明になじまない物事の価値、善悪、優劣についての批評や論議などは、意見ないし論評の表明に属するというベきである(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁、最高裁平成1 ‐10‐ 5年(受)第1793号、第1794号同16年7月15日第、小法廷判決・民集58巻5号1615頁参照)。 本件書き込みは、本件記事全体を読んだ場合には、原告らが薄井議員の辞職勧告決議の要求を行った事実を前提として、原告らが薄井議員の辞職勧告決議の要求を行ったことを強く批判することを主眼とするものであり、原告らが精神異常者又は精神病者であるとの事実を摘示するものではないから、証拠等をもってその存否を決することが可能な他人に関する特定の事項には当たらず、意見、論評に当たるというベきである。 (2) ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、上記行為は違法性を欠くものというベきであり、仮に上記証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当な理由があれば、その故意又は過失は否定される(最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁、前掲最高裁平成9年9月9日第三小法廷判決参照)。 本件書き込みは、上記のとおり、原告らの政治活動に対する批判を主眼とするものであり、公共の利害に関する事実に係るものであり、専ら公益を図る目的に出たものということできる。また、証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば、原告らが薄井議員の辞職勧告決議の要求を行ったことが無実であることが認められる。 しかし、本件書き込みは、前記のとおり、原告らを指して、執拗に「バカ」、 ‐11- 「キチガイ」、「狂人」との表現を繰り返したり、「脳味噌にウジがわいたアホ」との表現をしたりしており、原告らを極端にひぼうし、やゆし、原告らの全人格を否定するもので、原告らに対する人身攻撃に及んでおり、前後の文脈等を検討しても、論評ないし意見としてこのような表現をとらなけれぱならない必要性、合理性は全く認められないのであるから、原告らが東村山市議会議員という公職にあることや、本件書き込みが原告らの政治活動に対する批判を主眼とするものであることを考慮しても、意見ないし論評の域を逸脱したものということができる。 仮に、原告らがブログおはら汁上で対等に責任を持って反論することができるとしても、上記検討した点に照らすと、本件書き込みが意見ないし論評の域を逸脱したものであることは明らかである上、本件発信者は、原告らから住所及び氏名を明らかにするように求められてもこれに応じず、匿名を隠れみのに自己の書き込んだ論評ないし意見について何ら責任を問われないという前提でこれを書き込んでいるのであるから、原告らがブログおはら汁上で対等に責任を持って反論することかできないのであるから、原告らがブログおはら汁上で反論することもできることは上記結論を左右しない。 3 被告において本件書き込みにより原告らの権利が侵害されていることを知っていたか又は知ることができたと認めるに足りる相当な理由があったか(法3条1項所定の要件を具備しているか(争点(3))について 前記のとおり、本件書き込みは、意見、ないし論評の域を逸脱しており、当裁判所は、平成20年2月21日、各当事者双方に送付した書面で、本件書き込みが名誉毀損に当たることを前提として、本件書き込みの発信者に係る住所、氏名及びメールアドレスを開示し、本件き込みの送信防止措置を行う内容の和解に応ずること -12- を強く勧告したのであるから、インターネット広告業界の大手のプロバイダーであり、かつ、訴訟代理人として弁護士を選任し、その指導及び肋言を受けることができた被告は、遅くともこの時点では、本件書き込みにより原告らの権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当な理由があったということができる。 したがって、被告は、平成20年2月21日には、本件書き込みにつき送信停止措置を行うべき義務を負っており(おはら汁のブログ全部を送信停止措置を行う理由はなく、そのような義務は負っていない。)、そうであるにもかかわらず、上記措置を行わなかったのであるから、そのことにより原告らが被った被害を賠償すべき義務を負うというべきである。 4 原告らの損害、名誉を回復するのに適当な処分としての謝罪広告の必要性(争点(4)) について 本件書き込みは、前記のとおり、原告らを指して、執拗に「バカ」、「キチガイ」、「狂人」との表現を繰り返したり、「脳味噌にウジがわいたアホ」との表現をしたりしており、極端なやゆやひぼうに及んでいること、平成20年7月1日現在のブログおはら汁のアクセス数は1946万9678件であり、平成19年12月16日からの約半年間でアクセス数が約179万5700件増えているし、ブログおはら汁のトップページには、「東村山市議・朝木直子・矢野穂積問題」という原告らの氏名をタイトルにしたテーマがすぐわかるように表示されており、一般読者は、そこをクリックして新しい記事から順番に表示されるベージをクリックすれば、本件書き込みを閲覧することができるものの、上記平成20年2月21日までには、本件書き込みがされてから7か月以上経過しており、ブログおはら汁に表示されて -13- いるアクセス数は、ブラウザの更新ボタンを押したり、特定の記事やデーマをクリックするなどブログ内でのページ移動を行ったりするだけでカウントされる仕組みとなっている(弁論の全趣旨)ことを考慮すると、同日以降の一般読者の本件書き込みのアクセス数が相当大きいとは推認されないこと、ブログおはら汁は、本件発信者の個人のブログであるから。一般の読者もその信頼性を高く評価するものということができないこと、本件書き込みを行ったのは、本件発言者であり、披告が直接これに関与したものではないこと、被告は、合理的な理由がないにもかかわらず裁判所からの前記和解勧告に従っておらず、その悪質性が大きく、その会社としての姿勢に問題があると評価せざるを得ないこと、その他本件に表われた一切の事情に照らせば、被告の原告に対する慰謝料としては各50万円が相当というべきであり、被告に対して慰謝料の支払のほかに、謝罪広告の掲載を命ずる 必要性は認められないというべきである。 本件書込みによる害については、本件書き込み自体による損害を考慮すべきであり、仮に原告らの社会的評価が本件書き込み前から低下していたとしても、本件書き込みは、原告らの社会的評価をさらに低下させるものであるから、この点は、上記結論を左右しない、原告らがブログおはら汁上で反論することができることが上記結論を左右しないことは、前記2で説示したとおりである。 5 結論 以上によれば、原告らの請求は、主文1項から3項まで記載の限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第49部 -14- 裁 判 官 中 村 也 寸 志 -15- 別紙 審 き 込 み 目 録 1 @ 書き込みブログ ブログ「おはら汁」(URL http://ameblo.jp/oharan/) A書き込み掲載記事 2007(平成19)年6月26日付け「【アイツは元風俗ライターだから辞職させろ!】 東村山市議の朝木直子&矢野ほづみが火病って大暴れ」と題して掲載された記事 (http://ameblo.jp/oharan/entry-10037852051.html 2007-06-26 02:32:42) B 書き込み(ア乃至コ等19箇所) ア 「東村山市議会に辞職勧告要求を出したバカ」 イ 「■バカ・朝木直子 東村山市議、東村山市民新聞編集長・ 矢野穂積 東村山市議、東村山町民新聞発行人」 ク 「この朝木だとか矢野だとか言うバカ連中」 エ 「こんな脳味噌にウジがわいたアホ」 オ 「東キチガイ新聞」 カ 「キチガイババア」 キ 「このキチガイ臭は」 ク 「朝木&矢野のバ力2人」 ケ 「こんな救いようのないバカ」 コ 「朝木・矢野という東村山を代表するバカ市議連」 -16- 別紙 書 き 込 み 目 録 2 @ 書き込みブログ ブログ「おはら汁」 (URL http://ameblo.jp/oharan/) A 書き込み掲載記事 2007(平成19)年7月1日付けで、「実際に東村山市をあ ちこち取材してみて分かった。【東村山=雛見沢(ひぐらしのなく頃 に)】である。」(テーマ:東村山市議:朝木直子・矢野穂積問題 http://ameblo.jp/oharan/entry-10038256703.html 2007-07-01 00:33:45) B 書き込み(ア乃至ウ等16箇所) ア 「狂人議員達」 イ 「もはや狂っているとしか言えない問題ばかり巻き起こしている議員」 ウ 「狂人共」 -17- 別紙 謝 罪 広 告 目 録 謝 罪 広 告 当社は、当社が提供したインターネットのブログ上に荒井禎雄が 東村山市議会議員矢野穂積氏及び東村山市議会議員朝木直子氏に対して、極めて不適切な文言を使用して名誉を著しく傷つける記事を掲載したことについて、矢野氏及び朝木氏よりご指摘をうけたにもかかわらず、これを放置し、両氏の社会的評価を著しく低下させるという多大なご迷惑をおかけいたしました。 しかし、前記記事は全て根拠がなく誤りであって、ただちに削除するとともに、前記荒井のブログは閉鎖、削除し、今後このような名誉毀損行為行わないようお約束するとともに、矢野穂積氏及び朝木直子氏に対して心より深くお詫び申し上げます。 年 月 日 株式会社サイバーエージェント 代表取締役 藤 田 晋 <以下、読み取り不明瞭のため 推測による> ※ 掲載すべき株式会社サイバーエージェントのホームページURL、 http://www.cyberagent.co.jp/index.html ※ 掲載条件 「謝罪内容」の4文字は20ポイント、その他は12ポイントにより、上記 ホームページのトップ頁に、○○(1頁?)の?分の1のスペースで掲載する事。 <以上、読み取り不明瞭のため 推測による> -18- これは正本である。 平成20年9月5日 東京地方裁判所民事第49部 裁判所書記官 村上淳一郎 |